学術情報:栄養素の解説

ミネラル類

ミネラルの中で、ヒトの体内に存在し、栄養素として欠かせないことが確定しているものを必須ミネラルといい、現在16種類あります。必須ミネラルの種類は、今後の研究で必須性が証明されて、増えていく可能性があります。

主要ミネラル

必須ミネラルのうち、1日の摂取量が100mg以上のものを主要ミネラルといいます。(カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リン、硫黄、塩素)

カルシウム

骨や歯の形成に必要な栄養素です。ミネラルの中で最も多く体内に存在し、その量は体重の1~2%。99%が骨と歯にあり、残りの1%は血液凝固や心臓、神経系が機能するために重要な役割を担っています。

多く含む食品は、牛乳や乳製品、ひじき、ゴマなどです。

カルシウムの吸収にはビタミンDを必要とするため、食事からの摂取不足や腸からの吸収不良の他、ビタミンD不足により、カルシウム不足が引き起こされることもあります。長期にわたってカルシウムの欠乏状態が続くと、骨量が減少し、骨粗鬆症を引き起こします。

健康な人が通常の食事で多量にカルシウムを摂取しても健康障害が発生することは稀ですが、サプリメントによる過剰摂取で、泌尿器系の結石や他の ミネラルの吸収を妨げることが知られています。国民健康・栄養調査によると、日本人のカルシウム摂取量は基準値に達していませんので、積極的に摂取するこ とが大切です。

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マグネシウム

骨や歯の形成に必要な栄養素で、多くの酵素の正常な働きとエネルギーの生産を助け、血液循環を正常に保ちます。

多く含む食品は、豆腐、わかめ、玄米などです。

通常の食事をしている健康な人では不足することはほとんどありません。

過剰に摂取した場合は、腸からの吸収が抑えられ、便として排出されます(このとき下痢が起こる場合があります)。また、過剰に吸収した分は尿に排出されるので過剰症が起こることはまれです。ただし、腎機能が低下している時にサプリメントや医薬品(制酸薬、緩下薬)として多量に摂取した場合、高マグネシウム血症を起こすことがありますので、腎臓疾患のある人は注意が必要です。

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カリウム

ナトリウムと一緒に働いて身体の水分バランスを保ち、筋肉の収縮と弛緩の調整をします。

多く含む食品は、バナナ、とろろ昆布、さつまいもなどです。

食分の過剰摂取によるカリウムとナトリウムのバランスの崩壊や、ストレス、コーヒー、飲酒、甘いものなどもカリウム不足の原因になります。欠乏すると、疲れ易い、腸閉塞、高血圧などの症状が出ます。 過剰症については特に心配はありませんが、腎機能が低下している場合は、高カリウム血症を起こすことがあります。

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ナトリウム

カリウムと一緒に働いて身体の水分バランスを保ちます。

通常、塩化ナトリウムつまり食塩として摂取されます。食塩は調味料や加工食品などにも多く含まれているので、摂りすぎに注意が必要です。

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リン

体内に含まれる量がカルシウムに次いで多いミネラルで、85%はカルシウムやマグネシウムとともに骨や歯をつくる成分になっています。残りの15%は筋肉、脳、神経などに含まれていて、エネルギーをつくり出す時に働いています。

冷凍食品、加工食品、インスタント食品、清涼飲料水、スナック菓子などにはリンを多く含む食品添加物が使用されているため、摂りすぎに注意が必要です。

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硫黄

たんぱく質の構成成分として全ての細胞中に存在しています。

食事でたんぱく質を摂っていれば特に問題は起こりません。

塩素

塩酸として胃液に含まれ、塩化ナトリウム、塩化カリウムとして細胞の内外に含まれています。

食塩として摂取されますが、ナトリウムと違い多く摂取しても汗や尿として排出されます。


微量元素

必須ミネラルのうち、1日の摂取量が100mg未満のものを微量元素といいます。(鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、セレン、マンガン、モリブデン、クロム、コバルト)

赤血球を作るのに必要な栄養素です。

多く含む食品は、レバー、しじみ、ひじきなどです。

鉄不足は食物からの摂取不足、出血による鉄の喪失、吸収障害などによって起こります。特に急激な成長を伴う年長乳児や幼児、月経血損失のある女性、鉄要求量の増加する妊婦・授乳婦で鉄不足が多く見られます。鉄不足の代表的な症状は貧血ですが、重度にならないと症状が現れない為、注意が必要です。

健康な人が通常の食事で過剰症を起こすことはほとんどありませんが、サプリメントなどを大量に摂取すると、便秘、胃腸障害、鉄沈着、亜鉛の吸収阻害などが起こる可能性があります。また幼児では、サプリメントの誤飲により急性鉄中毒を起こすことがあり、重度の臓器障害や死を招くおそれがありますので、保管・管理は確実にしましょう。

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亜鉛

味覚を正常に保ち、皮膚や粘膜の健康維持を助け、たんぱく質・核酸の代謝に関与し健康の維持に役立ちます。

多く含む食品は、牡蠣、牛肉、ごまなどです。

亜鉛が不足すると、味覚障害や皮膚炎、食欲不振などが起こることが知られています。

亜鉛は毒性が低いとされているため、通常の食生活では摂りすぎの心配はほとんどありません。急性亜鉛中毒では胃障害、めまい、吐き気がみられます。継続的に過剰摂取すると、銅や鉄の吸収阻害による銅欠乏や鉄欠乏が問題となり、それに伴う貧血、免疫障害、神経症状、下痢、HDLコレステロールの低下などが起こるおそれがあります。

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赤血球の形成を助け、多くの体内酵素の正常な働きと骨の形成を助けます。

多く含む食品は、レバー、たこ、カシューナッツ、ココアなどです。

通常の食生活では不足の心配はほとんどありません。また、銅は毒性の低いミネラルであるため、慢性的な過剰摂取による悪影響については、ほとんど報告されていません。

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ヨウ素

ヨードと呼ばれることもある栄養素で、体内ではそのほとんどが甲状腺に存在し、甲状腺ホルモンの構成成分として重要な役割を担っています。

ヨウ素は海水中に多く存在するため、海藻類(昆布、わかめ)や魚介類(イワシ、サバ)に豊富に含まれています。

世界的には不足しやすいミネラルといわれていますが、和食に使われる昆布だしをはじめとし、日本人は海藻類をよく食べるため、摂取量が必要量を大幅に上回っています。そのため、不足が問題となることはありませんが、過剰摂取に注意が必要です。ヨウ素を過剰に摂取すると、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、甲状腺中毒症が起こります。

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セレン

酵素やたんぱく質の一部を構成し、抗酸化反応において重要な役割を担っています。

セレンは藻類、魚介類、肉類、卵黄に豊富に含まれており、通常の食事で不足することはありません。

セレンを慢性的に過剰摂取すると、爪の変形や脱毛、胃腸障害、下痢、疲労感、焦燥感、末梢神経障害、皮膚症状などがみられます。 古くから毒性の強い元素として知られていましたが、比較的最近、人にとって必須の微量元素であることが認識されるようになりました。毒性が強く、必要量と中毒量の差がとても小さいため、サプリメントでの摂取には注意が必要です。

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マンガン

酵素の活性化や金属酵素の構成成分として機能しています。

マンガンは、穀類、種実類などの植物性の食品に多く含まれており、通常の食事で不足することはないとされています。また、健康な人では、通常の食生活で過剰摂取が問題となることはありません。 慢性中毒は、マンガンを扱う産業現場での粉塵等の吸入で起こることが知られています。

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モリブデン

酸化還元反応を触媒するモリブデン酵素の構成成分として働きます。

穀類、豆類、種実類に豊富に含まれるため、通常の食事で充分に摂取することができます。また、他の重金属に比べて比較的毒性が低いため、過剰症が問題となることはほとんどありません。

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クロム

糖質代謝、コレステロール代謝、結合組織代謝、たんぱく質代謝の維持に関係しています。

人間の組織中や食品中のクロム含有量は極めて少なく、また、加齢とともに体内の含量が減少する唯一のミネラルですが、通常の食生活ではクロム不足が問題となることはありません。

自然界に存在するクロムはほとんどが3価クロムで、6価クロムは人為的に産出されます。

通常の食事から摂取されるクロムは毒性の低い3価クロムで、吸収率も低いため、過剰症が問題となることはあまりありませんが、長期間にわたる過剰摂取では、嘔吐、下痢、腹痛、腎尿細管障害、肝障害、造血障害、中枢神経障害が起こる可能性があります。

6価クロムは毒性が強く、皮膚炎や肺がんの原因となることが知られていますが、産業職場での粉塵やミストの暴露によるものがほとんどです。

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コバルト

ビタミンB12の構成成分で、赤血球の形成を助けますが、この働きはビタミンB12によるもので、コバルト単体での作用はまだ明らかにされていません。現在の栄養学ではコバルト単体を摂取しても有効とはいえませんので、ビタミンB12として摂取しましょう。

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