学術情報:栄養素の解説

ビタミン類

水溶性ビタミン

水に溶けやすいビタミン類。熱に弱く、水洗いや加熱調理により失われるので、調理法を工夫する必要があります。過剰に摂取しても尿中に排出されるので、過剰症の心配が少ない反面、毎日こまめに摂取することが求められます。

ビタミンB1

炭水化物からのエネルギーの生産や、皮膚・粘膜の健康維持を助けます。

多く含む食品は、小麦胚芽、大豆、豚肉(ヒレ・モモ)などです。

清涼飲料水や菓子を多く食べたり、アルコールを多量に飲んだ時に不足が起こります。ビタミンB1が不足すると、体が疲れやすくなり、集中力がなくなります。

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ビタミンB2

脂質からのエネルギーの生産や、皮膚・粘膜の健康維持を助けます。

多く含む食品は、牛・豚のレバー、脱脂粉乳、アーモンドなどです。

脂質の多い食事をすると不足が起こりやすく、不足した場合まず、唇、舌、眼などの粘膜にトラブルが起こります。

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ビタミンB6

たんぱく質からのエネルギーの生産や、皮膚・粘膜の健康維持を助けます。

多く含む食品は、にんにく、サンマ、牛レバーなどです。

ヒトの腸内細菌にはビタミンB6を合成するものがあるので欠乏症は起こりにくいですが、抗生物質などの薬を服用している場合は腸内細菌の働きが乱れるので、注意が必要です。ビタミンB6が不足すると、皮膚炎などが起こります。

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ビタミンB12

赤血球の形成を助けます。
植物性食品にはほとんど含まれません。多く含む食品は、レバー、しじみ、イクラなどです。
通常の食生活で不足することはほとんどありませんが、厳格な菜食主義者や吸収力が低下している高齢者、胃切除をした場合に不足が起こります。不足すると慢性疲労、運動時の息切れ、悪性貧血などを引き起こします。

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パントテン酸

糖質・脂質からのエネルギー生産や、皮膚・粘膜の健康維持を助けます。

多く含む食品は、レバー、納豆、しめじなどです。

ギリシャ語の「どこからでも」という言葉から名づけられたといわれ、その名の通り様々な食品に含まれているので、通常の食生活で不足することはほとんどありません。不足すると、成長の停止、体重減少、手足のしびれや灼熱感、皮膚炎などが起こることが知られています。

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ビオチン

糖質・脂質・たんぱく質の代謝に役立ち、皮膚・粘膜の健康維持を助けます。

多く含む食品は、レバー、卵黄、大豆などです。

いろいろな食品に含まれているので通常の食生活で不足することはほとんどありませんが、生卵白の大量摂取や薬剤により欠乏症になる場合があります。症状としては、食欲不振、疲労感、皮膚炎、うつ症状などが現れます。

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ナイアシン

糖質・脂質・たんぱく質の代謝に役立ち、皮膚・粘膜の健康維持を助けます。

多く含む食品は、カツオ、たらこ、落花生、マイタケなどです。

ナイアシンは食品から摂取するほか、体内で必須アミノ酸のトリプトファンからつくられるので通常の食生活で不足することはほとんどありません。不足すると皮膚炎、下痢、精神神経障害などを主症状とするペラグラを引き起こすことが知られています。

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葉酸

赤血球の形成を助け、胎児の正常な発育に役立ちます。

多く含む食品は、枝豆、ホウレンソウ、レバーなどです。

妊娠初期に葉酸が不足すると、胎児の脳神経障害の発生率が高くなることが知られており、妊娠を希望する女性は食品からの摂取に加えて、サプリメントなどから400μg/日摂取することが推奨されています。

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ビタミンC

抗酸化作用を持ち、コラーゲンの生成に役立ちます。また、皮膚・粘膜の健康維持を助けます。

多く含む食品は、パセリ、アセロラ、イチゴなどです。

飲酒者、喫煙者ではビタミンCの欠乏が起こりやすくなります。欠乏すると、風邪、しみ・そばかすの他、毛細血管からの出血、歯肉炎、貧血、全身倦怠感などの症状が現れます。

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脂溶性ビタミン

油になじむ性質があります。水洗いや加熱調理による損失が少なく、油と一緒に調理すると吸収がよくなります。肝臓や脂肪組織に貯蔵され、過剰に摂取すると過剰症を引き起こすので、サプリメントで摂取する場合には、摂取量に注意をしましょう。

ビタミンA

夜間の視力の維持や、皮膚・粘膜の健康維持を助けます。主に動物性食品に含まれています。

多く含む食品は、うなぎ、レバーなどです。

植物性食品には体の中でビタミンAに変換される「プロビタミンA」が含まれています。代表的なプロビタミンAはベータカロテンで、ニンジン、春菊、ホウレンソウなどに多く含まれています。ビタミンAが不足すると、眼の角膜や粘膜がダメージを受け、症状が悪化すると視力が落ち、失明する場合もあります。過剰症は、吐き気や頭痛の他、中枢神経系への影響や肝臓の異常などです。また、妊婦がビタミンAを大量に摂取すると、胎児に奇形を起こす可能性が高くなることが知られています。

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ビタミンD

カルシウムとリンの吸収を助け、骨・歯の形成に役立ちます。

多く含む食品は、あんこう肝、干ししいたけ、干しきくらげなどです。

ビタミンDは、食品からの摂取の他に、紫外線によって皮膚で合成されるので、日常生活で普通に日光に当たっている人は不足する心配はありませんが、日照時間に恵まれない地域や、屋内生活時間が長い場合、また冬は皮膚を日光にさらすことはないので不足が起こりやすくなります。高齢者では、ビタミンD不足の状態が長期間続いた場合、骨密度が低下し、骨粗しょう症や骨折のリスクが高まると言われています。

過剰症が起こることはまれですが、妊娠中のビタミンDの摂りすぎによる高カルシウム血症は、副甲状腺ホルモンの抑制や網膜症などを引き起こす可能性があるので、サプリメントで摂取する場合は定められた摂取量を守ることが大切です。

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ビタミンE

体内の脂肪を酸化から守り、細胞の健康維持を助けます。

多く含む食品は、植物油(コーン、大豆、サフラワー油)、小麦胚芽、アーモンドなどです。

不足状態が続くと、シミ、肩こりなどの症状が現れます。一般的な食事内容でビタミンEを過剰摂取することはほとんど考えられませんが、近年、サプリメントとして過剰摂取すると死亡率が高まるとの報告も出されています。定められた摂取量を守り、過剰摂取に注意しましょう。

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ビタミンK

出血した時に血液を固めて止血する働きを助けます。また骨の健康維持にも不可欠で、骨粗鬆症の治療薬としても使われています。

多く含む食品は、納豆、ホウレンソウ、わかめなどです。

ビタミンKは食事からの摂取に加え、腸内細菌によっても合成されるので、通常の食事をしている場合、ほとんど不足の心配はありませんが、抗生剤を長期間飲み続けている人は、腸内細菌による合成ができなくなるので欠乏しやすくなります。また腸内細菌が未発達な新生児は、ビタミンK欠乏出血症を起こし易いことが知られており、ビタミンKが予防投与されています。

欠乏すると、鼻血や胃腸からの出血、血液凝固の遅延などの症状が現れます。また慢性的な不足は骨粗鬆症や骨折を引き起こすことが知られています。

経口摂取した場合の副作用の報告はほとんどなく、また大量に摂取しても毒性がないことが報告されています。

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